ロディオラ(イワベンケイ、ロディオラ・ロゼア[Rhodiola rosea])はアイスランド、スウェーデン、フランス、ロシア、ギリシャなどで古くから薬草として利用されており、中国でも伝統的な漢方薬として利用されてきました。古くから様々な効能が伝わっていますが、科学的な研究でも、疲労の軽減や認知力の改善、主観的な福利の向上、うつ病の改善、ストレスの軽減などの効果を裏付けるエビデンスが報告されています。予備的な研究では、神経の保護作用や寿命の延長などの可能性が示唆されています。

概要

重要な効果・情報

ロディオラは主にヨーロッパ、アジア、アラスカなどに分布しており、アイスランド、スウェーデン、フランス、ロシア、ギリシャなどでは薬草として長い歴史があり、少なくとも紀元前1世紀の時点でギリシャの医者であるディオスコリデスがロディオラについて記述しています。漢方でも、紅景天として古くから使用されてきました。

ロディオラは、抗疲労薬として古くから使用されてきた、ロディオラ属(ベンケイソウ科 )のハーブです。、現在では、一般的に、エネルギー、持久力、強さ、認知能力を高めるためや適応促進サプリメント(アダプトジェン)として使用されています。オタネニンジン (朝鮮人参)についで人気のある適応促進サプリメントと考えられています。

ロディオラは、疲労感の原因となる身体的な疲労を有意に低下させることができます。ストレスや燃え尽き症候群、長期間の運動不足を改善できることが示唆されています。 一般の人にとってはロディオラの摂取で運動能力を改善させることを示唆するエビデンスがありますが、アスリートに対しては運動能力の改善は示唆されておらず、アスリートのパフォーマンスを改善するエルゴジェニック効果を持たないと考えられています。また、ロディオラは、運動由来でないストレス要因によって疲労した人の疲労の症状の軽減やストレスの改善や主観的な福利を向上させる効果については、高い信頼性を持つエビデンスで科学的に支持されています。

ロディオラは、疲労の減少を経験した人の認知機能を改善することができますが、疲労のない人にも認知力の向上が起こるかどうかや、大幅な認知力の増加を裏付けるエビデンスは不十分であり、さらなる研究が必要です。

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ロディオラの他の潜在的な用途として、毒素に対する神経保護作用が高いという予備的なエビデンスや、ロディオラや活性成分の摂取が雌ラットのストレス誘発性の過食を減らすことが示唆されています。脳内では、ロディオラはセロトニンの分泌を促進させ、コルチコステロイドを減少させることが示唆されています。ロディオラは一般的にモノアミンオキシダーゼ(MAO)の阻害する作用があると考えられてきましたが、ロディオラの経口摂取ではMAOの阻害には関連しない可能性もあります。その他にも、カロリー制限とは無関係に、寿命が最大20%増加する可能性を示唆する動物での予備的なエビデンスがあり期待が高まっていますが、哺乳類での実験も行われていないため、確認のための研究が待たれます。

適応・効果

適応情報

有効性の信頼度(非常に高い)
  • 疲労: ロディオラはストレスの多い状況で疲労を減少させます。特定のロディオラ抽出物が、疲労を減らし、試験、夜勤労働、睡眠不足の人の幸福感を高めることが示唆されています。それ以外のロディオラ抽出物も、精神的疲労を軽減します。
有効性の信頼度(高)
有効性の信頼度(中)
  • うつ病: うつ病患者でロディオラの6週間の摂取後に50%の人の症状が改善しました。
  • ストレス: 朝食とランチの前に特定のロディオラ抽出物を摂取すると、ストレスを感じる人のストレス症状を改善できることが示されています。
効果がない可能性(中)
  • 高山病: 初期の研究では、ロディオラを1日4回7日間服用しても、高山病の血中酸素や酸化的ストレスは改善されないことが示されています。
エビデンス不足
  • 運動能力の向上: 運動能力を改善に関するロディオラの有効性に関しては相反するエビデンスがあります。全体として、ロディオラの短期間摂取は効果がある可能性がありますが長期摂取は効果が弱まったり、一般の運動を指定ない人には効果がありますが、アスリートには効果がない可能性があります。また、運動による筋肉機能の改善は見られませんでしたが、筋肉の損傷を軽減する作用が報告されています。
  • 膀胱癌: 初期の研究は、ロディオラが膀胱癌においていくつかの利点をもたらすかもしれないことを示唆している。しかし、ロディオラは再発の危険性を減少させません。
  • エピルビシンに起因する心臓の損傷:初期の研究では、エピルビシンを含む化学療法の1週間前にロディオラの活性成分のサリドロシドの服用を開始し、化学療法の間も継続すると、エピルビシンによって引き起こされる心臓の損傷を軽減できることが示唆されています。
  • 不安: 初期の証拠によれば、特定のロディオラ抽出物は、全般性不安障害と呼ばれる状態の人々の不安およびうつを低下させる可能性がある。
  • 老化
  • 糖尿病
  • 難聴
  • 高コレステロール
  • エネルギーの向上
  • 不整脈
  • 性的な問題
  • ストレス性の心疾患
  • その他の条件

効果まとめ

効果まとめ表

効果まとめ表は動物や試験管内の実験ではなく、経口服用による人体での反応を科学的に研究したデータを基にどのような効果がどの程度あるのかをまとめたものです。

 

レベル 研究の質と量

?

信頼性の高い研究データの量. 信頼性の高いデータが多ければ多いほど研究結果の信頼性が高くなります.

二重盲検臨床試験が繰り返し行われ確実性の高い研究が実施されています。
2つ以上のプラセボ効果を排除した二重盲検試験を含む複数の研究が実施されています。
二重盲検試験が1件または複数コホート試験が実施されています。
上記に満たない研究内容または観察研究のみが報告されています。
研究の質と量

?

信頼性の高い研究データの量. 信頼性の高いデータが多ければ多いほど研究結果の信頼性が高くなります.

研究対象 効果の大きさ

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それぞれの研究対象に対する効果の方向性と大きさ. 対象項目を増加させるもの、低下させるもの、作用しないものを示しています.

研究の整合性

?

科学的な研究でも常に結果が一致するとは限りません. この評価が高いほど対象項目に関する科学的な研究結果が一致しており、整合性が取れています.

摘要
疲労 中程度 非常に高い 8件の研究結果を見る
長期間にわたり低用量を服用したり、短期で高用量を服用した場合、疲労の低下はかなり強く、研究結果の整合性も高いですが、プラセボに対して疲労の増加を指摘した研究が1件あります。
認知 中程度 非常に高い 4件の研究結果を見る
ロディオラの摂取で疲労が軽減されている場合は特に効果的です。ロディオラの認知に対する影響を、疲労軽減と独立して評価したエビデンスは不十分です。
主観的福利 中程度 非常に高い 4件の研究結果を見る
疲労感を持つ人やストレスを受けた人の主観的な幸福感や満足感の増加は、他のサプリメントより大きいです。
うつ病 中程度 ? 研究結果を見る
エビデンスは限られていますが、ロディオラの摂取はプラセボよりも有意にうつ病を改善しました。50%の人が症状が改善し、症状の強度もHAMD方式で30-35%軽減しました。
C-反応性タンパク質 小さい ? 研究結果を見る
ロディオラの摂取でC反応性タンパク質の減少が見られました。
乳酸生産 小さい ? 研究結果を見る
ロディオラの補給で乳酸の分泌の減少が認められました。
筋肉損傷 小さい 非常に高い 2件の研究結果を見る
運動後のクレアチンキナーゼの循環レベルの低下が見られました。
処理精度 小さい ? 研究結果を見る
処理精度の向上が見られました。疲労の低減が関連している可能性があります
知覚される疲労度 小さい ? 研究結果を見る
疲労感の低下が見られました。
ストレス 小さい ? 2件の研究結果を見る
ストレスの低下が見られましたが、疲労の低下ほど顕著ではないようです。
注意 ? ? 研究結果を見る
注意に有意な影響は見られませんでした。
血圧 ? ? 研究結果を見る
血圧に有意な影響は見られませんでした。
心拍数 ? 非常に高い 2件の研究結果を見る
心拍数に有意な影響は見られませんでした。
脂質過酸化 ? 非常に高い 2件の研究結果を見る
血清中の脂質過酸化バイオマーカーに有意な影響は見られませんでした。
筋肉酸素化 ? ? 研究結果を見る
運動中または高地試験における酸素供給に有意な影響は見られませんでした。
筋力 ? ? 研究結果を見る
筋力に有意な影響は見られませんでした。
反応時間 ? ? 研究結果を見る
反応時間に有意な影響は見られませんでした。
VO2 Max ? ? 研究結果を見る
運動を指定ない人での下肢運動中の酸素消費を若干改善する可能性がありますが、VO2 maxの改善はあまり期待できないようです。
重量 ? ? 研究結果を見る
体重に有意な影響は見られませんでした。

 

副作用

副作用と安全性

ロディオラは、短期的に傾向服用する場合はおそらく安全と考えられています。研究ではロディオラ抽出物を1日2回、6〜10週間使用して安全上の大きな問題は報告されていません。長期使用の安全性は不明です。 ロディオラは、頭痛、めまい、口の渇き、過剰な唾液の分泌を引き起こす可能性があります。

特別な注意と警告:

妊娠と授乳:妊娠中または授乳中にロディオラを服用することの安全性に関する十分な信頼性の高い情報はありません。安全のため、使用を避けることをおすすめします。

自己免疫疾患: ロディオラは免疫系に作用する可能性があります。理論的には、多発性硬化症(MS)、慢性関節リウマチ(RA)などの自己免疫疾患を悪化させる可能性があります。

糖尿病: ロディオラは血糖値を下げる可能性があります。理論的には、インスリンや糖尿病薬を服用している患者で、血糖値が低くなりすぎるリスクを高める可能性があります。

低血圧:ロディオラは血圧を下げる可能性があります。理論的には、低血圧の人などの血圧を下げすぎる可能性があります。

 

注意事項

その他の名称

  • 紅景天(漢方)、ロディオラ・ロゼア、ロザビン、ローゼンルート、ローディオラ・リゾゾーム、ゴールデンルート、アークティック・ルート、リドラ

混同しやすいもの

注意点

  • ロディオラは、 カフェインほどの刺激はありませんが、わずかな刺激性を持ちます。
  • ロディオラは試験管での実験で高濃度になるとCYP3A4酵素を阻害することが知られています。
  • ある研究では、英国で市販されているRhodiola roseaサプリメントの一部が希釈または添加物が混ぜられている可能性があることが報告されています。

分類カテゴリー

良い組み合わせ

確認事項

服用方法

推奨用量、有効量、その他の詳細

ロディオラの補給は、SHR-5抽出物、ロサビン(約3%)およびサリドロシド(約1%)の補給と考えられる傾向があります。ロディオラの日常的な疲労予防としての使用は、50mgまでの低用量で有効であると報告されています。疲労およびストレスに対するロディオラの急性使用は、288〜680mgの範囲が効果的と考えられています。ロディオラは服用後ベルカーブに近い反応をすることが示されているため、高用量で服用しても効果がない可能性があるため、上記の680mgの用量を超えないことが推奨されています。

 

科学的根拠・参考文献