ニコチンは、たばこに含まれる主要な刺激性化合物であり、吸引剤、チューインガム、パッチなどの形で単離されたニコチンが販売されています。主にアセチルコリン系で作用し、中毒性があることは有名ですが、他にも認知機能の向上や脂肪の燃焼作用が示されています。
コンテンツ
概要
重要な効果・情報
ニコチンは、たばこの中に含まれる最も有名なアルカロイドの一つです。ニコチン自体は、他の多くの植物(ナスや胡椒のようなナス科の植物)にも微量に存在します。ニコチンをタバコ以外から摂取した場合、体内での効果が大きく異なります。ニコチンはいくつかの作用メカニズムを持っています。第1は、ニコチンが神経伝達物質アセチルコリンと同様に、アセチルコリン受容体を直接活性化し、アドレナリン、ドーパミンなどのカテコールアミンの増加を誘発できます。このメカニズムが中毒性と脂肪燃焼につながっています。第2に、ニコチンはアロマターゼおよび2つのエストロゲン受容体のうちの1つを直接阻害する抗エストロゲン化合物としても作用します。これにより、ニコチンの慢性的な使用に関連する女性ホルモンに関する副作用が起こると考えられています。第3は、ニコチンは本来酸化防止特性を持ち、第1メカニズムのアセチルコリンメカニズムとあわせて抗炎症効果を示します。
ニコチンは、ベータ-アドレナリン作動性受容体(エフェドリンの分子標的)を介して作用し、アドレナリンが増加し、脂肪燃焼作用を示します。アドレナリンが増加し、短期間ですが代謝速度の増加するようです。脂肪分解の増加は、アドレナリンではなく、酸化促進作用によって起こるようです。カテコールアミンの増加は、アセチルコリンのように向知性効果を促進し認知力 を改善するようです。中毒に関しては、ニコチンの中毒リスクは、摂取量が多いほど高まる用量依存性と、ニコチンが脳に達する速度依存性を持つようです。
ガムやパッチは、ニコチンが脳に到達する速度が遅いために、中毒リスクは低くなります。ニコチンの副作用は、カテコールアミンの増加によるエフェドリン 、ヨヒンビンまたはカフェインなどの刺激剤の急性副作用と類似しています。長期間にわたるニコチン使用の副作用は、エフェドリンと同程度となる可能性があります。エフェドリンとニコチンは時間が立っても有効性を維持しますが、ヨヒンビンやカフェインは2週間以内に効力を失います。
適応・効果
適応情報
循環器疾患、呼吸器疾患、消化器疾患、代謝性疾患等の基礎疾患をもち、医師により禁煙が必要と診断された禁煙意志の強い喫煙者が医師の指導の下に行う禁煙を行う補助としてニコチンパッチが使用されます。
効果まとめ
効果まとめ表
効果まとめ表は動物や試験管内の実験ではなく、経口服用による人体での反応を科学的に研究したデータを基にどのような効果がどの程度あるのかをまとめたものです。
レベル | 研究の質と量 ? 信頼性の高い研究データの量. 信頼性の高いデータが多ければ多いほど研究結果の信頼性が高くなります. |
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二重盲検臨床試験が繰り返し行われ確実性の高い研究が実施されています。 | |
2つ以上のプラセボ効果を排除した二重盲検試験を含む複数の研究が実施されています。 | |
二重盲検試験が1件または複数コホート試験が実施されています。 | |
上記に満たない研究内容または観察研究のみが報告されています。 |
研究の質と量 ? 信頼性の高い研究データの量. 信頼性の高いデータが多ければ多いほど研究結果の信頼性が高くなります. | 研究対象 | 効果の大きさ ? それぞれの研究対象に対する効果の方向性と大きさ. 対象項目を増加させるもの、低下させるもの、作用しないものを示しています. | 研究の整合性 ? 科学的な研究でも常に結果が一致するとは限りません. この評価が高いほど対象項目に関する科学的な研究結果が一致しており、整合性が取れています. | 摘要 |
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血圧 | – | 中程度 4件の研究結果を見る | 血圧に対する結果は混合しています。 | |
インスリン感受性 | – | 高い 3件の研究結果を見る | 長期的なインスリン感受性に高い影響を与えないようですが、急性のニコチン曝露はインスリン感受性を低下させる可能性があります。 | |
不安 | – 2件の研究結果を見る | 認知機能低下の症状の不安が軽減されたという報告もありますが、健康な人は不安を起こしやすくなる可能性があります。 | ||
認知 | – 研究結果を見る | 軽度の認知障害を持つ人の認知の改善が見られます。 | ||
成長ホルモン | – 研究結果を見る | 急速ですが軽度の成長ホルモンの抑制が見られました。 | ||
心拍数 | 非常に高い 2件の研究結果を見る | ニコチン摂取後に刺激作用による心拍数の増加が示されています。 | ||
黄体形成ホルモン | – 研究結果を見る | 黄体形成ホルモンの増加が見られました。 | ||
記憶力 | – 研究結果を見る | 軽度の認知障害を持つ人がニコチンを摂取すると記憶力の増加が見られました。 | ||
代謝率 | – 研究結果を見る | ニコチンを含むチューインガムを20分咀嚼した後180分間を測定すると、代謝速度が用量依存的に増加するようです。(1~2mgのニコチンで3.7~4.9%) | ||
ペニスの胴囲 | – 研究結果を見る | 血流の減少にによる弛緩状態の陰茎胴囲の減少が見られました。 | ||
プロラクチン | – 研究結果を見る | ニコチン摂取によるプロラクチンの増加が見られました。 | ||
反応時間 | – 研究結果を見る | 急性ニコチン摂取による反応時間の短縮が見られました。 | ||
重量 | 中程度 2件の研究結果を見る | ニコチンの使用により軽度の体重減少の可能性がありますが、信頼性は低く、脂肪燃焼効果よりも食物摂取量の低下によるようです。 | ||
血糖値 | – | – 研究結果を見る | 空腹時血糖値に有意な影響は見られませんでした。 | |
コルチゾール | – | – 研究結果を見る | コルチゾールレベルに有意な影響は見られませんでした。 | |
うつ病 | – | – 研究結果を見る | 抑うつ症状に有意な影響は見られませんでした。 | |
脂肪酸化 | – | – 研究結果を見る | ニコチンが代謝率を上昇させても脂肪またはグルコースの酸化速度に有意な影響は見られませんでした。 | |
インスリン | – | – 研究結果を見る | 空腹時インスリン値に有意な影響は見られませんでした。 | |
リビドー | – | 非常に高い 2件の研究結果を見る | 性欲に有意な影響は見られませんでした。 | |
自制心 | – | – 研究結果を見る | 自制心に有意な影響は見られませんでした。 | |
テストステロン | – | – 研究結果を見る | テストステロンレベルに有意な影響は見られませんでした。 | |
注意 | – | – 研究結果を見る | 健常者の注意に有意な影響は見られませんでした。 |
副作用
ニコチン摂取の重大な副作用としてアナフィラキシー様症状(低血圧、頻脈、呼吸困難、蕁麻疹、血管浮腫等)があります。
その他にも、皮膚〔一時刺激性接触皮膚炎(紅斑、そう痒)、一時刺激性の接触皮膚炎(丘疹、腫脹、小水疱、刺激感)、皮膚剥離、色素沈着、一時刺激性の接触皮膚炎(熱感等)〕、精神神経(不眠、神経過敏、錯覚感、振戦、不安、抑うつ気分、頭痛、めまい、倦怠感、異夢、悪夢、集中困難、疲労、しびれ、眠気、易刺激性、感情不安定)、消化器(嘔気・嘔吐、腹痛、口内炎、下痢、食欲不振、胸やけ、便秘、消化不良)、肝臓(AST・ALT・γ-GTP・LDH・総ビリルビン値上昇)、循環器(血圧上昇、動悸、不整脈)、自律神経(顔面蒼白、口渇、ほてり、多汗、唾液過多)、感覚器〔霧視、味覚倒錯(口中苦味感、味覚異常)、耳鳴〕、呼吸器(咳嗽、息苦しさ、咽頭違和感)、筋・骨格系(背部痛、筋肉痛、肩こり、関節痛)、過敏症〔アレルギー性接触皮膚炎、そう痒、発疹、全身性蕁麻疹、粃糠疹(ふけの増加)〕、その他(疼痛、ニコチン臭、TG上昇、不快感、胸痛、浮腫、寒気、無力症、貼付上肢の重感)などの副作用が起こる可能性があります。
注意事項
禁忌
非喫煙者、妊婦・授乳婦、不安定狭心症、急性期の心筋梗塞、重篤な不整脈、経皮的冠動脈形成術直後、冠動脈バイパス術直後の場合は使用しないでください。
4)脳血管障害回復初期
5)[過敏症]
相互作用
- 喫煙によりCYP1A2が活性化
- 喫煙中に使用していたフェナセチン、カフェイン、テオフィリン、イミプラミン、ペンタゾシン、フロセミド、プロプラノロール、ロピニロール、クロザピン、オランザピンは、禁煙したことで作用が増強する可能性があります。
下記の薬とニコチンの併用に注意してください。
- アドレナリン遮断薬:ニコチンにより血中コルチゾール、カテコールアミンが増加することで作用が減弱する可能性があります。
- アドレナリン作動薬:ニコチンにより血中コルチゾール、カテコールアミンが増加することで作用が増強する可能性があります。
混同しやすいもの
- ニコチン酸(ナイアシンまたはビタミンB3)、シガレット
注意点
- 心疾患患者に使用する場合、問診、心電図、血圧測定、運動負荷試験等により症状が安定していることを確認してください。
- 使用は禁煙意志の強い喫煙者の禁煙補助を目的としていることを患者に十分説明し、禁煙宣誓書等により禁煙意志の強いことを確認してから使用してください。
- ニコチンは、本質的に中毒のリスクがあります。中毒はニコチンの摂取量やく脳への到達速度に依存します。
- 中毒のリスクおよび認知増強特性はパッチが最も低く、チューインガム、吸入器、たばこの順に高くなります。
- 女性は男性よりも中毒のリスクが高いようです。
服用方法
推奨用量、有効量、その他の詳細
ニコチンの投与方法は複数あります。タバコは利益を大幅に上回るリスクがあるため推奨できません。
- 吸入器はニコチンの効果を素早く感じられますが、その分中毒のリスクも高まります。
- パッチは適用してから吸収されるまでに約1時間かかり、認知の急激な変化も少なく、ニコチンの血清レベルを一定に維持することができます。
- チューインガムは吸入器とパッチの中間に位置します。
現在のところ、禁煙する個人のニコチンの使用に関する「最適」な用量を示唆するエビデンスは不十分です。禁煙する個人の場合、低用量から始めることが推奨されています。例えば、2mgのチューインガムや24mgのニコチンパッチを四分の一に切断して使用し始める例があります。ニコチン代替療法としてニコチンを使用している場合は、製品の指示に従ってください。