アグマチン はL-アルギニンの代謝生成物です。神経系に由来する痛みや薬物中毒を緩和する作用が示されています。また、アグマチンを補給することにより、脳卒中のリスクを減らし、認知能力の維持に効果があるとされています。
コンテンツ
概要
重要な効果・情報
アグマチン は、L-アルギニンが脱カルボキシル化(カルボン酸基の除去)されることで生成されます。ニューロンに貯蔵され、ニューロンが活性化されたときに放出されます。アグマチンは、神経伝達物質および神経調節物質であると考えられています。予備的な研究では、アグマチンが神経系に由来する痛みや薬物中毒の治療において潜在的に有用であることが示唆されています。また、アグマチンを補給することで、痛みを緩和したり、毒素や脳卒中から脳を保護したり、認知を高めたり、モルヒネやフェンタニルのような鎮痛剤と相乗的に作用することが示唆されています。アグマチンと麻酔薬の相乗作用により、鎮痛薬耐性、中毒、痛み自体を軽減することができます。アグマチンにはいくつかの作用のメカニズムがあり、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)およびニコチン性アセチルコリン受容体を阻害し、イミダゾリン受容体を活性化することができます。また、アグマチンは、一酸化窒素合成酵素を阻害することができ、それによって、一酸化窒素を調節することができます。アグマチンは、カルシウムチャネルおよび特定のセロトニン受容体も阻害することができます。アグマチンのメカニズムは完全には決定されておらず、さらなる研究が必要です。アグマチンは非常に有望な化学物質であることを示唆する多くの動物での研究からエビデンスが示されています。効果については、人間でのエビデンスが不足しているため、動物実験での効果が人間でも適応できるかはまだ分かっていません。いくつかの研究が人間を対象に行われていますが、大半は経口摂取ではなく、アグマチン注射を使用しています。様々な観点での研究を重ねて、人間の経口摂取によるアグマチンの効果が実証される必要があります。
適応・効果
適応情報
有効性の信頼度(中)
- うつ病: 予備的な研究によるエビデンスしかありませんが、アグマチンの補給によってうつ病が寛解したという報告があります。
- 疼痛: 二重盲検法の研究によって、腰椎椎間板神経根症の痛みがプラセボと比較して顕著に緩和しました。
エビデンス不足
- 脳卒中
- 認知能力の改善
- 筋肉の増大
効果まとめ
効果まとめ表
効果まとめ表は動物や試験管内の実験ではなく、経口服用による人体での反応を科学的に研究したデータを基にどのような効果がどの程度あるのかをまとめたものです。
レベル | 研究の質と量 ? 信頼性の高い研究データの量. 信頼性の高いデータが多ければ多いほど研究結果の信頼性が高くなります. |
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二重盲検臨床試験が繰り返し行われ確実性の高い研究が実施されています。 | |
2つ以上のプラセボ効果を排除した二重盲検試験を含む複数の研究が実施されています。 | |
二重盲検試験が1件または複数コホート試験が実施されています。 | |
上記に満たない研究内容または観察研究のみが報告されています。 |
研究の質と量 ? 信頼性の高い研究データの量. 信頼性の高いデータが多ければ多いほど研究結果の信頼性が高くなります. | 研究対象 | 効果の大きさ ? それぞれの研究対象に対する効果の方向性と大きさ. 対象項目を増加させるもの、低下させるもの、作用しないものを示しています. | 研究の整合性 ? 科学的な研究でも常に結果が一致するとは限りません. この評価が高いほど対象項目に関する科学的な研究結果が一致しており、整合性が取れています. | 摘要 |
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痛み | ? 研究結果を見る | 腰椎椎間板神経根症の試験では、痛み緩和の程度はプラセボに対してかなり顕著であり、補充を中止してから2ヶ月間持続しました。残念ながら参照薬物との比較はありません。 | ||
うつ病 | ? 研究結果を見る | 1つのかなり予備的な研究が存在しますが、2-3gのアグマチンを補給した3人の被験者すべてにおいて寛解が報告されていますが、さらなるエビデンスによる裏付けが必要です。 |
副作用
注意事項
その他の名称
- クロニジン置換物質、4-(アミノブチル)グアニジン、脱カルボキシル化アルギニン
副作用
- アグマチンの人体への副作用を系統的に調べた研究はありません。
- アグマチンが胃酸から細胞を保護することが示されていますが、アルコール離脱状態の軽減に効果がある一方で、アルコールとの併用で、潰瘍のリスクが増加する可能性があることが報告されています。
- アグマチンは、薬を使用する人の食欲を高める可能性があります。増量を望んでいる人には役に立ちますが、肥満の人は注意が必要です。
- アグマチンについては、十分な研究がまだ実施されていないため、サプリメントとして広く使用されていません。
- アグマチンは血管拡張を引き起こすため、血圧を低下させます。 低血圧や低血圧の治療を受けている人は使用を控えましょう。
混同しやすいもの
- L-アルギニン (親構造)
注意点
- 現時点では、アグマチンは無毒性であると考えられていますが、過剰摂取での毒性試験が不十分です。ヒトで使用されている2,670mgの投与量内で抑えることが賢明です。
分類カテゴリー
良い(相乗的な)組み合わせ
- ブプロピオン(医薬抗うつ薬;アグマチンはその効能を増強します)
- オピオイド作動性鎮痛薬(モルヒネなど)
- アグマチンとカンナビノイド( マリファナなど)は、カンナビノイド(CB1)受容体を介したシグナル伝達を増強します
- アルコール 離脱 (症状を軽減すると考えられています)
悪い組み合わせ
- L-アルギニンおよびL-シトルリン (神経系に作用する可能性があります。 心血管との相互作用については十分な研究が行われていません)
- ヨヒンビンとラウオルシン (アグマチンはこれらが阻害するα2A受容体を活性化します)
- D-アスパラギン酸は、NMDA受容体を介したシグナリングの減少させる可能性があります
- アルコールとの併用 (アルコールによる潰瘍を増加させる可能性があります)
- クレアチン (クレアチンがNMDAシグナリングに正の影響を及ぼす可能性があり、アグマチンは同じ対象に負の作用をし、それぞれの効果が相殺される可能性があります。
確認事項
服用方法
推奨用量、有効量、その他の詳細
人間での効果についてのエビデンスが不足しており、アグマチンの標準的な摂取量は現時点では不明です。人間を対象にした研究では、神経系に由来する疼痛の治療のために一日あたり1,300〜2,670mgのアグマチンを使用しています。認知を改善するために人間で必要されるアグマチンの用量は、経口摂取で体重あたり1.6〜6.4mg/kgと推定されています。これは、ラットの10〜40mg / kgの投与量範囲を人間に換算しており、68kgの人では217〜435mgに相当します。過剰摂取での研究が行われていないため、体重1kg当たり6.4mgを超えた摂取はおすすめできません。アグマチンは、アルギニンと同じように体内で運搬されるため、アルギニンが含まれるタンパク質と一緒に摂取すると吸収が悪くなってしまいます。経口でアグマチンを補給することが、動物実験で観察されたのと同じ程度の利益をもたらすかどうかを決定するためには、さらなる研究が必要です。