トレハロースは、細胞レベルでタンパク質の変性を調節することで治療的なメカニズムを果たすと考えられている糖ですが、実際には、消化されて急速に分解されてしまうため、経口摂取では十分な効果が得られない可能性があります。ドライアイに対する効果が示されています。
概要
重要な効果・情報
トレハロースはグルコースの二糖類です。食事に含まれるマルトースもグルーコースの二糖類ですが結合の仕方が異なります。トレハロースは、主に食中ではキノコの成分として含まれていますが、それ以外には通常の食事には含まれていません。
非定型のメカニズムを介してアポトーシス(制御された細胞死)を誘発する作用を持つため様々な治療目的に研究されており、トレハロース注射を用いた治療法は有効性を示しています。
残念ながらトレハロースは腸から吸収されにくいだけでなく、腸壁内にトレハロースをグルコースに迅速に分解する酵素(トレハラーゼ)が存在し、この酵素を迂回して吸収されたトレハロースも、肝臓や血中に存在するトレハラーゼによって、ほぼ全てが消化され、細胞に到達して治療効果を発揮できるものはごくわずかのようです。
トレハロースの効果を維持する唯一の方法は、経口摂取を避け、化合物を局所的に適用して、皮膚や目、髪の細胞になるべく早く到達させることです。市販の製品よりも効能が高い例が示されており、例えば点眼薬として使用する場合、市販のドライアイの点眼薬よりも効果が高いことが示されています。
適応・効果
適応情報
有効性の信頼度(高)
効果まとめ
効果まとめ表
効果まとめ表は動物や試験管内の実験ではなく、経口服用による人体での反応を科学的に研究したデータを基にどのような効果がどの程度あるのかをまとめたものです。
レベル | 研究の質と量
? 信頼性の高い研究データの量. 信頼性の高いデータが多ければ多いほど研究結果の信頼性が高くなります. |
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二重盲検臨床試験が繰り返し行われ確実性の高い研究が実施されています。 | |
2つ以上のプラセボ効果を排除した二重盲検試験を含む複数の研究が実施されています。 | |
二重盲検試験が1件または複数コホート試験が実施されています。 | |
上記に満たない研究内容または観察研究のみが報告されています。 |
研究の質と量
? 信頼性の高い研究データの量. 信頼性の高いデータが多ければ多いほど研究結果の信頼性が高くなります. |
研究対象 | 効果の大きさ
? それぞれの研究対象に対する効果の方向性と大きさ. 対象項目を増加させるもの、低下させるもの、作用しないものを示しています. |
研究の整合性
? 科学的な研究でも常に結果が一致するとは限りません. この評価が高いほど対象項目に関する科学的な研究結果が一致しており、整合性が取れています. |
摘要 |
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ドライアイ | 大きい | 非常に高い 2件の研究結果を見る |
トレハロースを含む点眼剤は、プラセボ(生理食塩水)の点眼剤だけでなく、ドライアイ用の実績のある製品であるヒアルロン酸(ヒアルリン)やヒドロキシエチルセルロース(ミトア)などの点眼剤よりも大きいようです。
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副作用
注意事項
注意点
- トレハラーゼによって、トレハロースをグルコースに迅速に消化・分解されるため、トレハロースの経口摂取サプリメントがグルコース以上の特定の効果を持つ可能性はほとんどありません。
副作用
- トレハロースの経口摂取は安全とされていますが、鼓腸や吐き気などの軽度の副作用を経験する可能性があります。
- マウスを使った実験で、トレハロースの経口摂取がクロストリジウム菌の流行の原因という説が発表されましたが、人での臨床検査での報告はなく、特殊な条件での実験であるため、人の経口摂取が原因のクロストリジウム菌の感染の報告はありません。
- 点眼薬・外用薬として使用される場合も安全とされていますが、体質により充血やかゆみ、発赤などの副作用を経験する可能性があります。
確認事項
用法・用量
ドライアイに関するトレハロースの効果を調べた研究では、1日6回、トレハロースを含む点眼薬を使用した場合に、100mMの方が200mMよりも効果が高いことが示されました。