グルタミンは栄養不良、菜食主義などのグルタミンの摂取が少ない場合や、傷病や長時間の持久運動で体内での必要量が増大している場合に服用することで効果が示されている条件付き必須アミノ酸です。筋肉を増大させたり、運動能力を向上させたり、砂糖やアルコールへの禁断症状を低下させる作用があると宣伝されることがありますが、科学的なエビデンスはありません。
コンテンツ
概要
重要な効果・情報
グルタミンは、食事タンパク質に含まれる20種の天然アミノ酸の1つで体内で最も多く存在し、条件つき必須アミノ酸(外傷・疾患・筋肉疲労時に大概からの摂取が必須となるアミノ酸)に分類されています。単離されたアミノ酸としてだけでなく、食肉や卵にも豊富に含まれ、ホエイタンパク質、カゼインタンパク質には非常に高レベルで含まれています。サプリメントに利用されるグルタミンは一般的にはグルタミンを生産する細菌を用いた発酵プロセスによって製造されています。
グルタミンはグルコースよりもエネルギー源として優れており、腸や免疫系の健康にとって非常に重要な化合物です。一般に筋肉を増強するサプリメントとして宣伝されていますが、健康な人の筋肉量の増加を示すエビデンスはありません。火傷や筋肉への創傷のような外傷を受けた人やAIDSのような筋肉疲労が発生する病気の人にのみ筋肉量の増加または病気による筋肉量の減少を軽減する有効性が示されています。
グルタミンは医薬品の副作用の軽減に使用されます。例えば、化学療法や抗癌剤による下痢、口内の痛みや腫れ(粘膜炎)、神経痛(神経障害)、筋肉や関節の痛み、免疫系・消化器系の保護などに使用されます。また、創傷を修復し重要な器官を機能させ続けるために窒素が必要ですが、このように利用される窒素の約3分の1はグルタミンから供給されるため、グルタミンを補給することで骨髄移植・大腸手術・外傷の回復の促進、重病患者の感染の予防に効果が示唆されています。
HIV/エイズ患者の場合などのように、グルタミンの供給よりも消費量が多い場合には、筋肉の消耗が起こる可能性があります。グルタミンを摂取することで体内のグルタミンを維持し、そのような症状を予防できることが示唆されています。
運動能力の向上、クローン病、シスチン尿症、筋ジストロフィー症などに使用される例もありますが、科学的な研究ではこれらに対する効果は示されませんでした。
それ以外にも、下痢症、胃潰瘍、潰瘍性大腸炎、膵炎などの消化器系疾患、うつ病、過敏症、不機嫌、注意欠陥多動障害(ADHD)、不安、不眠症などの精神・神経系疾患、鎌状赤血球貧血などの泌尿器系疾患、禁酒の支援などに使用される例がありますが、これらの効果に関するエビデンスは不十分です。
適応・効果
適応情報
有効性の信頼度(中)
- 熱傷: 栄養管や点滴を通じてグルタミンを投与することと、火傷を持つ患者の感染を減少させ、病院の滞在を短縮し、創傷治癒を改善するようです。創傷治癒
- 重大な外傷: グルタミンは重大なけがの後に細菌が腸から移動して体の他の部分に感染するのを防ぐというエビデンスが複数ありますが、すべてのエビデンスが一致しているわけではありません。 重篤な外傷を負った人がグルタミンを服用することで死の危険性を低下させられるかどうかについてはそれぞれ相反する結果が出ており明らかではありません。
- AIDS/HIV感染症患者の体重減少および腸疾患: HIV/エイズ患者がグルタミンを経口摂取することで、食物の体内への吸収が改善し、体重を増やすのに効果があります。 このような目的には1日当たり40グラムの用量が最良の効果を生むようです。
- 抗がん剤誘発性口内炎: いくつかのエビデンスは、グルタミンが化学療法による口内の痛みや腫れが軽減することを示唆されています。 しかし、すべての化学療法患者に対してこのような効果を持つわけでは無いようです。 どの患者に効果を持つ可能性があるかは不明ですが、一部の研究者は、グルタミンが不足している患者に最も効果が見られる可能性が高いと考えています。
- 手術: 静脈内に栄養と一緒にグルタミンを与えることで、大きな手術の後の免疫機能を改善し、感染に関連する合併症を軽減する可能性があります。 また、骨髄移植後、栄養と一緒にグルタミンを静脈内投与すると、感染のリスクが軽減され、栄養のみに比べて回復が改善されるようです。 しかし、大きな手術を受ける人や骨髄移植を受ける人のすべてにグルタミンの投与が効果があるわけでは無いようです。
効果がない可能性(中)
- 運動能力向上: グルタミンの経口摂取は運動能力の向上には影響を与えないようです。
- クローン病: グルタミンの経口摂取はクローン病の症状を改善しないようです。
- 腎臓・膀胱に結石を作る遺伝性疾患(シスチン尿症): グルタミンを経口摂取しても、腎臓や膀胱に結石を形成する遺伝疾患は改善しないようです。
- 筋ジストロフィー: 研究によると、筋ジストロフィーを患う小児がグルタミンを経口摂取しても筋力は向上しないようです。 筋肉サプリ
エビデンス不足
- HIV感染症治療薬による下痢症: 初期の研究では、グルタミンを経口服用するとHIV患者の薬の副作用の下痢の重篤度を軽減することが示されています。下痢
- 化学療法による下痢症: グルタミンが化学療法後に下痢を予防するのに役立つ可能性を示唆するいくつかのエビデンスがありますが、すべての研究結果が一致しているわけではありません。下痢
- がん治療中の免疫不全の軽減: グルタミンが化学療法によって引き起こされる免疫系の損傷を軽減すること示唆するエビデンスがいくつかありますが、すべての研究結果が一致しているわけではありません。免疫サプリ 癌
- 下痢症: 小児や乳児の下痢の治療に使用される場合のグルタミンの効果は相反しています。 初期の研究では、グルタミンを経口摂取することで子供の下痢の持続時間が減少することが示唆されていますが、従来の再水和溶液と一緒にグルタミンを経口で摂取することは、再水和溶液単独よりも利点がないようである。水和作用 下痢
- 低出生体重児: 出生時体重が低い乳児のグルタミン補給の影響については相反した結果があります。 いくつかの研究では、栄養チューブでグルタミンを服用させると、低出生体重児の感染症が減少することが示唆されています。 しかし、ほとんどの研究は、低出生体重児には有益ではないことを示唆しています。体重
- パクリタキセルによる筋肉痛や関節痛: パクリタキセルによる筋肉や関節の痛みを軽減するのにグルタミンが役立つかもしれないというエビデンスがいくつかあります。 筋肉サプリ:関節サプリ:痛み 癌
- 膵炎: 初期の研究では、栄養と一緒に点滴でグルタミンを投与すると、免疫機能は改善されますが、合併症のリスクや膵炎患者が病院で過ごす時間は減少しないことが示唆されています。免疫サプリ:抗炎症サプリ:炎症
- 大腸手術後の栄養問題(短腸症候群): 研究者によると成長ホルモンと一緒にグルタミンを使用することが短腸症候群の治療において、一部の患者の栄養チューブへの依存度を減らすようです。しかし、グルタミン単独では効果がないようです。成長ホルモン
- うつ状態(うつ病):
- 不機嫌:
- 易怒性(神経過敏):
- 不安障害(不安): 不安サプリ
- 注意欠陥多動障害 (ADHD):
- 不眠症:
- 胃潰瘍:
- 潰瘍性大腸炎:
- 鎌状赤血球症:
- アルコール依存症:
効果まとめ
効果まとめ表
効果まとめ表は動物や試験管内の実験ではなく、経口服用による人体での反応を科学的に研究したデータを基にどのような効果がどの程度あるのかをまとめたものです。
レベル | 研究の質と量
? 信頼性の高い研究データの量. 信頼性の高いデータが多ければ多いほど研究結果の信頼性が高くなります. |
---|---|
二重盲検臨床試験が繰り返し行われ確実性の高い研究が実施されています。 | |
2つ以上のプラセボ効果を排除した二重盲検試験を含む複数の研究が実施されています。 | |
二重盲検試験が1件または複数コホート試験が実施されています。 | |
上記に満たない研究内容または観察研究のみが報告されています。 |
研究の質と量
? 信頼性の高い研究データの量. 信頼性の高いデータが多ければ多いほど研究結果の信頼性が高くなります. |
研究対象 | 効果の大きさ
? それぞれの研究対象に対する効果の方向性と大きさ. 対象項目を増加させるもの、低下させるもの、作用しないものを示しています. |
研究の整合性
? 科学的な研究でも常に結果が一致するとは限りません. この評価が高いほど対象項目に関する科学的な研究結果が一致しており、整合性が取れています. |
摘要 |
---|---|---|---|---|
アンモニア | 小さい | 低い 3件の研究結果を見る |
グルタミンを毎日摂取する場合にはアンモニアが低下し、高用量を急性服用するとアンモニアが増加する可能性があります。
|
|
血糖値 | 小さい | 非常に高い 2件の研究結果を見る |
グルタミンを経口摂取するとグルコースに変換されるため、血糖値が上昇することが示されています。
|
|
クレアチニン | 小さい | – 研究結果を見る |
血清クレアチニンの増加が見られますが、筋損傷によるものではなく、糸球体濾過率の急激な低下によるものと考えられています。
|
|
運動能力(心臓症状あり) | 小さい | 中程度 2件の研究結果を見る |
COPD患者では効果が見られませんでしたが、体重あたり80mg/kgのグルタミンを経口服用することで、慢性安定狭心症の患者の運動能力の改善を示唆した研究があります。
|
|
糸球体濾過率 | 小さい | – 研究結果を見る |
0.5g/kgのグルタミンを与えられた高齢者の糸球体濾過率のげいかが見られました。それほど深刻なレベルではありませんが、一部のバイオマーカーに悪影響を及ぼすレベルまで減少しているため、注意が必要です。長期的にどのような影響が出るかは不明です。
|
|
インスリン | 小さい | 非常に高い 2件の研究結果を見る |
グルタミンの補給後インスリンの増加が起こります。これはグルタミンの摂取による血糖の上昇に反応したものと考えられます。
|
|
尿素 | 小さい | – 研究結果を見る |
グルタミンの補給によって尿素の増加が認められました。
|
|
尿酸 | 小さい | – 研究結果を見る |
初期には血清の尿酸値が10~20%の範囲で上昇しますが、時間とともに低下し、1週間以内に落ち着くようです。このような尿酸値の増加の実用的意義は不明です。
|
|
C-反応性タンパク質 | – | – 研究結果を見る |
C反応性タンパク質のレベルに有意な影響は見られませんでした。
|
|
コルチゾール | – | – 研究結果を見る |
コルチゾールの有意な変化は見られませんでした。
|
|
脂肪質量 | – | – 研究結果を見る |
エクササイズとグルタミンの補給を組み合わせても、脂肪量を減らす上でプラセボほどの効果は見られませんでした。
|
|
ヘマトクリット | – | – 研究結果を見る |
ヘマトクリットへの有意な影響は見られませんでした。
|
|
免疫 | – | – 研究結果を見る |
免疫に有意な影響は見られませんでした。
|
|
炎症 | – | – 研究結果を見る |
グルタミンの補給によるIL-6以外の炎症性サイトカインに有意な影響は見られませんでした。
|
|
リーンマス | – | – 研究結果を見る |
グルタミンの補給と重量挙げのルーチンを組み合わせても、除脂肪量には有意な影響は見られませんでした。
|
|
肝臓酵素 | – | – 研究結果を見る |
安全性試験において、血清中の肝臓酵素に対するグルタミンの補給による有害な作用は見られませんでした。
|
|
筋肉損傷 | – | – 研究結果を見る |
筋肉損傷のバイオマーカーの血清クレアチニンに、グルタミン補給による有意な影響は見られませんでした。
|
|
筋力 | – | – 研究結果を見る |
グルタミン補給による筋力への有意な影響は見られませんでした。
|
|
デュシェンヌ型筋ジストロフィーの症状 | – | – 研究結果を見る |
デュシェンヌ筋ジストロフィーに関連する症状に対して有意な影響は見られませんでした。
|
|
テストステロン | – | – 研究結果を見る |
テストステロンに有意な影響は見られませんでした。
|
|
白血球数 | – | – 研究結果を見る |
安全性試験において白血球数に有意な影響は見られませんでした。
|
|
クローン病の症状 | 小さい | 低い 3件の研究結果を見る |
クローン病に関連する症状を軽減できる可能性がありますが、相反しており信頼性は低いです。
|
副作用
副作用と安全性
グルタミンの1日あたり40グラム以内の経口服用や600mg/kg以内の点滴はほとんどの人にとって安全とされています。
注意と警告
子供: 適切に経口摂取する場合、グルタミンは安全です。 3歳から18歳までの子供には、体重1kg当たり0.7グラム以上の用量を毎日与えてはいけません。 子供の高用量の安全性については十分な情報はありません。
妊娠と授乳: 妊娠中および授乳中にグルタミンを使用することの安全性については十分には分かっていません。安全のため使用を控えてください。
肝硬変: グルタミンは症状を悪化させる可能性があります。 肝硬変の人はグルタミンの補給を避けてください。
思考や混乱を伴う重度の肝疾患(肝性脳症): グルタミンは症状を悪化させる可能性があります。 使用を避けてください。
グルタミン酸モノナトリウム(MSG)過敏症: MSGに敏感な場合は、グルタミンにも敏感である可能性があります。
躁病: グルタミンは躁病の人に精神的な影響を与える可能性があります。 使用しないでください。
発作: グルタミンが一部の人の発作の可能性を高める可能性があります。 使用しないでください。
注意事項
相互作用
中程度の相互作用
下記の組み合わせに注意してください。
- ラクトースグルタミンは一部の人の発作の可能性を高める可能性があります。 使用しないでください。
- 癌治療薬(化学療法) グルタミンががん治療の医薬品の有効性を低下させる可能性があるという懸念があります。 しかし、この相互作用が実際に起こるかは分かっていません。
- 発作予防薬(抗けいれん薬)発作を予防するために使用される医薬品は、脳内の化学物質に影響します。 グルタミンも、脳内の化学物質に影響を与える可能性があります。発作予防薬には、フェノバルビタール、プリミドン、バルプロ酸、ガバペンチン、カルバマゼピン、フェニトインなどがあります。
服用方法
推奨用量、有効量、その他の詳細
L-グルタミンの補給は、5g以上での使用が一般的です。血清中のアンモニアを増加させる場合に有効とされる最も低い用量は0.75g/kgで、68kgの人の場合約51gです。筋肉量の増加に対するグルタミンの補給は他の成分と比較すると相対的に非効率なため、十分な研究が行われておらず、最適な投与量は分かっていません。上記の用量は、腸の健康やグルタミンの不足(タンパク質摂取の不足、菜食主義者)を解消するために十分な用量です。
下記の用量が科学的な研究で使用されました。
経口服用
- 化学療法による口の痛みの軽減:グルタミン液4グラム、化学療法の始まりから4時間ごとに、病院の退院または症状の解消まで4時間ごとに飲んでいます。
- HIVの症状: 1日あたり8〜40グラムが使用されていますが、1日40グラムが最適なようです。