アンドログラフス・パニクラタ: Andrographis paniculata(穿心蓮、センシンレン)は、古くから風邪の治療などに薬として使われてきたハーブです。免疫を改善し、病気の期間を短縮し、風邪の諸症状を治療する効果が認められています。
コンテンツ
概要
重要な効果・情報
アンドログラフィス(センシンレン)(Andrographis)は、インドやスリランカなどの南アジア諸国に見られるハーブで、苦味がありますが、伝統的にアーユルヴェーダや漢方で使用されているハーブです。主に葉や地下茎が薬として使用されます。
アンドログラフィスは、一般的な風邪やインフルエンザの予防と治療に使用され、インドでの1919年のインフルエンザの大流行はアンドログラフィスで収まったという人もいるほどですが、この真偽は判明していません。風邪の治療については、症状が出始めてから3-5日間服用して有効であったという人間でのエビデンスがあります。その他の効果については、エゾウコギとの混合物での研究がほとんどであるため、アンドログラフィス単体で効果があるのかについては不明な場合が多くあります。
アンドログラフィスは、それ以外にも、下痢、便秘、腸のガス、疝痛、胃痛などの消化不良や肝肥大、黄疸、薬物による肝臓の損傷などの肝疾患、ハンセン病、肺炎、結核、淋菌、梅毒、マラリア、コレラ、レプトスピラ症、狂犬病、副鼻腔炎、HIV /エイズなどの感染症、創傷、潰瘍、かゆみなどの皮膚病に使用されています。
喉の痛み、咳、扁桃腺の腫れ、気管支炎、アレルギー、動脈の硬化(アテローム性動脈硬化)、心臓病や糖尿病の予防もにアンドログラフィスを使用する人もいます。
他にも、ヘビや虫刺されの治療、食欲不振、腎臓の問題(腎盂腎炎)、痔核、家族性地中海熱などの遺伝性疾患にも使用する人がいます。
アンドログラフィスは、収斂剤、殺菌剤、鎮痛剤、解熱剤、寄生虫治療剤としても使用されています。
抗癌作用については、インビトロ (体外 )試験および動物研究では、アンドログラフィス(Andrographis paniculata)が癌細胞に対して抗増殖作用を持ち、癌細胞の拡散を遅らせることを示唆していますが、このハーブは癌細胞を殺す作用はないと考えられています。
アンドログラフィスの生物活性成分は、アンドログラフォリドという単一のジテルペン分子が主な有効成分と考えられています。一部のアンドログラフィス製品には、アンドログラフォリドを増量したものがあり、およそ30%のアンドログラフォリドが含まれています。アンドログラフォリドを高用量で服用する歳の安全性や有効性は不明なことに注意が必要です。高用量のアンドログラフィスの服用で睾丸や肝臓に毒性を引き起こすという報告がありましたが、いくつかのフォローアップ研究では、研究結果は再現されていません。
アンドログラフィスは免疫系を刺激して作用していると考えられています。 HIV陽性者の血球数を改善し、アレルギーに効果を持つ可能性があります。
適応・効果
適応情報
有効性の信頼度(中)
- かぜ: いくつかの研究では、アンドログラフィス抽出物をシベリア人参(Kan Jang、Swedish Herbal Institute)と組み合わせて病気が始まって72時間以内に服用すると、風邪の症状が改善することが示されています。 いくつかの症状は治療後2日ほどで改善しますが、ほとんどの症状が無くなるまでには4〜5日間の治療が必要です。 いくつかの研究によれば、アンドログラフィスとエゾウコギ(シベリア人参)の組み合わせは、エキナセアよりも子供の風邪の症状を緩和することを示唆しています。 また、初期の研究では、アンドログラフィス抽出物を服用することで風邪を治療でき、他の研究ではアンドログラフィス製品が風邪を予防することを示唆しています。
- 扁桃炎による発熱や咽喉痛の軽減: いくつかの研究では、高用量(毎日6グラム)のアンドログラフィスの服用による3〜7日間の治療はアセトアミノフェン(パラセタモール)と同程度に作用することが示されています。
- 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎): 初期の研究では、アンドログラフ抽出物を毎日8週間服用すると、メサラミンと同程度に炎症性腸疾患の症状が軽減されることが示唆されています。
- 関節リウマチ: 初期の研究は、アンドログラフィス抽出物を14週間服用することで、関節の痛みの軽減はプラセボと比較して統計的な有意に達しませんでしたが、服用前と比較して関節リウマチの症状を軽減しています。
- インフルエンザの治療: インフルエンザの患者が、エゾウコギ(シベリア人参)とアンドログラフィス抽出物を組み合わせて服用すると、FDAによって承認されているアマンタジンを服用している患者よりもアジアインフルエンザの予防やA型インフルエンザの治療に効果的でした。この組合せのハーブを服用した患者は、インフルエンザ発症後の副鼻腔の痛み、呼吸の問題や咳(気管支炎)などの合併症も少なくなったことが報告されています。1
エビデンス不足
- 家族性地中海熱: アンドログラフィス、エゾウコギ(シベリア人参)、シソンドラ、甘草(ImmunoGuard、Inspired Nutritionals)の組み合わせは、小児の家族性地中海熱の発症の期間、数および重症度を軽減することが示唆されています。
- アレルギー
- 副鼻腔炎
- HIV感染 / AIDS
- 食欲不振
- 心臓病
- 肝疾患
- 寄生虫
- 感染症
- 皮膚疾患
- 潰瘍
- その他の症状
効果まとめ
効果まとめ表
効果まとめ表は動物や試験管内の実験ではなく、経口服用による人体での反応を科学的に研究したデータを基にどのような効果がどの程度あるのかをまとめたものです。
レベル | 研究の質と量 ? 信頼性の高い研究データの量. 信頼性の高いデータが多ければ多いほど研究結果の信頼性が高くなります. |
---|---|
二重盲検臨床試験が繰り返し行われ確実性の高い研究が実施されています。 | |
2つ以上のプラセボ効果を排除した二重盲検試験を含む複数の研究が実施されています。 | |
二重盲検試験が1件または複数コホート試験が実施されています。 | |
上記に満たない研究内容または観察研究のみが報告されています。 |
研究の質と量 ? 信頼性の高い研究データの量. 信頼性の高いデータが多ければ多いほど研究結果の信頼性が高くなります. | 研究対象 | 効果の大きさ ? それぞれの研究対象に対する効果の方向性と大きさ. 対象項目を増加させるもの、低下させるもの、作用しないものを示しています. | 研究の整合性 ? 科学的な研究でも常に結果が一致するとは限りません. この評価が高いほど対象項目に関する科学的な研究結果が一致しており、整合性が取れています. | 摘要 |
---|---|---|---|---|
病気の長さ | – 研究結果を見る | 病気の初期の兆候が現れた時点で服用すると、病気の期間を減らすことができる数少ない成分の1つと考えられます。 参照薬物との比較がないため、効果の程度は不明です。 | ||
病気の重症度 | – 研究結果を見る | 鼻、耳、および喉の病気の症状に対して強い効力があるようです。参照薬物との比較がないため、効果の程度は不明です。 | ||
咽頭洞炎の症状 | – 研究結果を見る | 咽頭炎の症状へのアンドログラフィスの効力は、参照薬物のアセトアミノフェン(パラセタモール)と同等でした。 | ||
潰瘍性大腸炎の症状 | 非常に高い 2件の研究結果を見る | エビデンスによると非常に効果的であると思われます。1件の研究で効力や持続性はメサラジンと同程度とされています。 | ||
関節リウマチの症状 | – 研究結果を見る | 関節リウマチの症状が軽減しています。 | ||
上部呼吸器感染症のリスク | – 研究結果を見る | 効果を評価することは困難ですが、プラセボより有意に改善しています。 | ||
肝臓酵素 | – 研究結果を見る | HIVを患っている人の研究で肝臓の酵素の増加が示唆されました。より信頼できる研究で複製される必要があります。 | ||
CD4リンパ球 | – | – 2件の研究結果を見る | 現時点ではCD4 +リンパ球に対する影響は矛盾しているため不明です。 | |
初期のウイルス学的応答 | – | – 研究結果を見る | HIVにおける有意な抗ウイルス効果は認められませんでした。 |
副作用
副作用と安全性
アンドログラフィスの短期間の適量の服用はほぼ安全と考えられています。 また、アンドログラフィス抽出物とエゾウコギを組み合わせたものを3ヶ月服用しても安全と考えられています。アンドログラフィスは、食欲不振、下痢、嘔吐、発疹、頭痛、鼻水、疲労などの副作用を引き起こす可能性があります。高用量または長期間に使用される場合、アンドログラフィスは、リンパ腺の腫れ、重篤なアレルギー反応、肝臓酵素の上昇、その他の副作用を引き起こす可能性があります。
注意と警告:
幼児と小児: 子供のアンドログラフィスの短期間の経口服用は、おそらく安全と考えられています。 アンドログラフィスを他のハーブと組み合わせて1ヶ月まで使用されています。
妊娠と授乳: アンドログラフィスの妊娠中の経口服用は安全でない可能性があります。 流産を引き起こす可能性があります。 授乳中のアンドログラフの安全性については十分に分かっていません。 安全のため、妊娠中や授乳中はアンドログラフィスの服用を避けましょう。
不妊症: 動物の実験でアンドログラフィスが生殖を妨げる可能性があるという報告があります。人間でのデータはありませんが、妊娠を希望している男性及び女性は、アンドログラフィスを使用しないことをお勧めします。
多発性硬化症(MS)、狼瘡(全身性エリテマトーデス、SLE)、関節リウマチ(RA)、またはその他の症状の「自己免疫疾患」: アンドログラフィスは、免疫系をより活性化させ、自己免疫疾患の症状を増大させる可能性があります。 関節リウマチはアンドログラフィスを含む製品の服用で改善したという研究がありますが、上記のような症状をお持ちの場合は、必要に応じて医師と相談し、慎重にアンドログラフを使用してください。
出血: アンドログラフィスは血液凝固を遅らせる可能性があります。出血性疾患を持つ方は出血や挫傷のリスクが増加する可能性があります。
低血圧: 人間での研究では変化は認められませんでしたが、アンドログラフィスが血圧を低下させる可能性があることを示唆する研究があります。 理論的には、低血圧の人がアンドログラフィスを使用すると、血圧が下がり過ぎる可能性があります。
注意事項
相互作用
中程度の相互作用
下記の組み合わせに注意してください。
- 高血圧の薬 (降圧剤) アンドログラフィスは血圧を下げる可能性があります。高血圧治療薬のカプトプリル、エナラプリル、ロサルタン、バルサルタン、ジルチアゼム、アムロジピン、ヒドロクロロチアジド、フロセミドなどを服用している方は注意が必要です。
- 免疫系を抑制する薬 (免疫抑制剤)アンドログラフィスは免疫系を増強します。免疫系を低下させる薬のアザチオプリン、バシリキシマブ、シクロスポリン、ミノフェノレート、タクロリムス、シロリムス、プレドニゾン、コルチコステロイドなどを服用している場合は注意が必要です。
- 血液凝固を遅らせる薬(抗凝固剤/抗血小板剤)アンドログラフィスは血液凝固を遅らせる可能性があります。血液凝固を遅らせる薬のアスピリン、クロピドグレル、ジクロフェナク、イブプロフェン 、ナプロキセン、ダルテパリン、エノキサパリン、ヘパリン、ワルファリンなどを服用している場合は注意が必要です。
その他の名称
- センシンレン(穿心蓮:Chuanxinlian)、チッレッタ(Chiretta)、苦草(King of Bitters)、カルメグ(Kalmegh)、クリート(Creat)、Yijianxi(一見喜)、Lanhelian(欖核莲)、インドエキナセア、ブーニンバ
分類カテゴリー
良い組み合わせ
- エゾウコギ(シベリア人参)[Eleutherocossus Senticoccus]
- P-糖タンパク質阻害剤(アンドログラフを高用量で摂取する際に吸収が増加)
確認事項
服用方法
推奨用量、有効量、その他の詳細
アンドログラフィスの根の抽出物の標準用量は2,000〜6,000mgです 。アンドログラフィスの根の抽出物は、基本的には1〜2%のアンドログラフォライドを含量していますが、最大で4%の含有量が報告されています。濃縮された根の抽出物では、最大30%のアンドログラフォライドを含んでいます。濃縮抽出物の標準用量は200mgです。実験では、下記のように服用されています。
経口服用:
- 風邪の治療: 4~5.6mgのアンドログラフォライドと400mgのエゾウコギ(シベリア人参)を1日3回服用
- 発熱や咽頭炎:1日3-6グラム